NVIDIA、科学シミュレーション向けオープン物理AIモデル「Apollo」を発表
NVIDIAはSC25にて産業・計算工学シミュレーションを高速化するオープンモデル群「Apollo」を発表した。半導体や流体力学、気象予測などの領域に対応し、ニューラルオペレータや拡散モデルを採用。シーメンスやシノプシスなどの業界大手が導入を進めている。

NVIDIA Apolloは、産業エンジニアリングや科学計算シミュレーションを大幅に高速化するために設計されたオープン物理AIモデル群です。
セントルイスで開催されたSC25にて発表されました。従来の数値計算では数時間から数日かかっていたシミュレーションを、数秒単位のリアルタイム推論へと置き換えることを目指しています。
何ができるのか
ものづくりや科学研究におけるシミュレーションは、第一原理計算に基づく膨大な計算リソースを必要とします。Apolloは、従来の計算データから学習したAIサロゲート(代替)モデルを用いることで、高精度を保ちながら瞬時に結果を予測します。
対応領域は多岐にわたり、半導体設計・製造(欠陥検出や計算リソグラフィ)、構造力学、気象・気候予測、数値流体力学(CFD)、電磁気学、そして核融合やプラズマ解析を含むマルチフィジックスの6分野に及びます。
業界大手による実証も進んでいます。Applied Materialsは半導体製造シミュレーションソフト「ACE+」の一部モジュールで最大35倍の高速化を達成し、反応チャンバー内の気流や熱変化を数秒で予測しています。
Cadenceは航空機全体のリアルタイムデジタルツインを構築し、シーメンスは流体解析ソフト「Simcenter STAR-CCM+」へApolloの統合を進めています。またSynopsysは、AIサロゲートを活用したシミュレーション初期化によって最大500倍の処理高速化を実現しました。
仕組みと提供形態
Apolloは単一のモデルではなく、ニューラルオペレータ、Transformer、拡散モデルといった最新アーキテクチャに物理領域の専門知識を組み込んだモデル群です。
偏微分方程式などの連続系物理現象を効率的に学習できる構造を採用しており、通常の深層学習モデルで懸念される物理法則の破綻を防ぎます。
パッケージには事前学習済みチェックポイントと、学習・推論・ベンチマーク用のリファレンスワークフローが含まれます。ユーザーは独自データを用いてファインチューニングすることも可能です。
モデル群は近日中にbuild.nvidia.com、Hugging Face、およびNVIDIA NIMマイクロサービスとして順次公開される予定です。
なぜ重要か
CAEや流体解析、半導体設計に携わるエンジニアにとって、設計パラメータを変更した結果が即座に確認できるようになるメリットは絶大です。試行錯誤の反復サイクルが劇的に短縮されます。
業界全体から見れば、NVIDIAはCAEベンダーと競合するのではなく、オープンモデルを通じてシーメンスやSynopsysなどのツール群を自社GPU基盤にさらに深く定着させる巧みな手を打ちました。物理AIの産業実装を一段押し進める試みとして注目に値します。
情報源 (1)
- blogs.nvidia.com(新しいタブで開きます)原文blogs.nvidia.com