Anthropic、「Claude Code」のセルフホスト環境を公開ベータ提供 自社インフラで実行可能に
AnthropicはTeamおよびEnterpriseプラン向けに「Claude Code」セルフホスト環境のパブリックベータを開始した。自社インフラ上でエージェントを動かせるため、ソースコードを社内に留めたまま内部データベースと連携できる。推論リクエストはAnthropic側に送信される設計で、利用にはランナーの構築と保守が必要となる。

大企業のセキュリティ担当者に「クラウドの AI エージェントに社内コードを実行させたい」と相談すれば、大抵は即座に難色を示されます。
社内データベースやプライベートなパッケージ管理システムを外部に公開するわけにはいきません。一方で、AI を社内ネットワークから完全に締め出してしまうと、開発効率の向上は見込めません。
Anthropic は 8 月 6 日、Team プランおよび Enterprise プランの組織を対象に、Claude Code のセルフホスト環境のパブリックベータ版を提供開始しました。開発者は自社のインフラ上で Claude Code のセッションを実行できるようになります。
実行環境を自社ファイアウォールの内側へ
これまでの Claude Code は、セッションの実行基盤がすべて Anthropic 側のクラウドに置かれていました。今回のアップデートにより、企業は自社のネットワーク内に「Runner」と呼ばれるプロセスを常駐させることが可能になります。
開発者が Web、モバイル、デスクトップ、あるいは自動ルーチンからセッションを開始すると、そのタスクは Anthropic のクラウドではなく、自社インフラ上の Runner にルーティングされます。
これにより、Claude は社内専用のマイクロサービスや社内リポジトリ、プライベートデータベースに直接アクセスできるようになります。公開インターネットに社内資産を一切露出させる必要はありません。
実行環境内に独自のコンパイラや SDK、社内専用 CLI をあらかじめ組み込んでおくことも可能です。開発者がセッションを立ち上げた瞬間から、ビルドの準備が整った状態になります。
Runner には、一定台数を常時稼働させて負荷を分散する固定モードと、キューの状況に応じてオーケストレーターが自動で起動・停止を行うオンデマンドモードの 2 種類が用意されています。セッションごとに作業ディレクトリが分離されるため、エンジニア間のデータ干渉も防げます。
なお、個人の PC 上で動くプロセスを外部から操作するリモートコントロール機能とは異なり、セルフホスト環境はプラットフォーム部門が全社向けに運用する共有インフラとして機能します。
手元に残るデータとクラウドへ送られるデータ
注意が必要なのは、これが完全なオフライン化を意味するわけではないという点です。
リポジトリのチェックアウト、ビルド成果物、各種シークレット、変更されたファイル自体は、すべて企業側が用意した自社インフラ内に留まります。
しかし、プロンプトやモデルの回答、そして Claude が読み取ったコードを含むツールの実行結果などの会話データは、推論のために Anthropic のサーバーへ送信されます。また、どの端末からでも作業を再開できるよう、セッション履歴もクラウド側に保存されます。
この機能はデフォルトで無効化されており、ゼロデータ保持契約を結んでいる組織では利用できません。Anthropic は、自前での運用には Runner のコンテナイメージ作成やオーケストレーションを担う専任のプラットフォーム部隊が必要になるため、大半の企業には引き続き運用負荷のないホスト型の利用を強く推奨すると明言しています。
なぜ重要か
私たちは、今回のセルフホスト対応がエンタープライズ企業の実情に即した非常に現実的な一手であると考えています。
これまで社内開発で AI エージェントを導入する最大の障壁は、モデルの賢さではなくネットワーク構成にありました。社内 API を叩けず、プライベートライブラリも参照できない外部のサンドボックスでは、複雑なリポジトリの PR 生成や CI 修正を任せることは不可能でした。社内インフラへの常駐を認めたことで、業務での実用性は一気に高まります。
ただし、手放しで喜べるわけではありません。Claude が読み込んだコード断片は推論のために Anthropic へ送られるため、完全なデータ流出防止を求める極めて厳しい金融機関や防衛関連では依然としてハードルが残ります。
市場全体で見れば、GitHub Copilot や各種オープンソースのエージェントに対抗し、高単価なエンタープライズ層を本気で取り込もうとする姿勢が鮮明です。専任のインフラチームを抱える中堅から大企業にとって、制御性と利便性を両立させる有力な選択肢になると見られます。
情報源 (1)
- claude.com(新しいタブで開きます)原文claude.com