Perplexity、AIエージェント向け記憶システム「Brain」発表 Markdown Wikiで長期記憶を構造化
PerplexityはAIエージェント「Computer」向けの記憶システム「Brain」を発表した。数カ月にわたる作業履歴をMarkdown形式のWikiやファイルシステムとして三層構造で蓄積し、引用リンクから元のログを検証できる。バックグラウンドで動作する自律エージェントが定期的に知識を整理・更新するため、文脈を失わずに長期のタスクに対応できる。

数ヶ月にわたり何百回も対話しているAIエージェントに対して、毎回「画像はPNGではなくPDFで書き出して」と指示し直すのは、生産的とは言えません。
多くのエージェントは過去の対話を完全に忘れるか、あるいは膨大な履歴をコンテキスト窓に詰め込んで動作を重くしてしまいます。Perplexityは8月19日、自社のComputer AIエージェント向けに設計された記憶システム「Brain」を発表しました。長期的な文脈を社内Wikiのように整理する仕組みです。
3層のファイルシステムで記憶を管理
Perplexityは独自の複雑なデータベースを導入せず、エージェントが動作するサンドボックス内のファイルシステムをそのまま記憶の置き場に選びました。
記憶のディレクトリは3つの階層に分かれています。最下層のsessionsには過去の会話ログや要約が保管され、中層のnotesにはトピックごとにまとめられた断片的なメモが入ります。
最上位にあるknowledgeディレクトリがBrainの本体です。数週間から数ヶ月に及ぶ対話ログから知識を統合し、プロジェクトや概念ごとにリンクされたMarkdownページを生成します。
ページ間は2種類のリンクで結ばれています。関連情報を横方向につなぐWikilinkと、元となった会話ログを縦方向に参照できるCitationリンクです。裏側ではGitによるバージョン管理が行われており、複数のエージェントが同時に更新しても履歴が壊れません。
リモートアクセスの遅延を回避する設計
エージェントがファイルを探す際、システム上の遅延が大きな課題になります。
外部のファイルシステムをリモートマウントする方法もありますが、エージェントが情報を探すときは1回の処理で何千回ものファイル操作を行います。社内検証によると、リモート環境でgrepを実行するとローカル環境に比べて400倍から500倍も遅くなり、ネットワークの往復だけで処理が停止状態に陥ることが判明しました。
一方で、全データを毎回ローカルに複製するのも非効率です。そこでBrainは、直近のデータとインデックスだけを初期セットとして読み込みます。
過去の詳細な情報が必要になったときだけ、専任のMemory Agentがセマンティック検索を実行し、必要なファイル群をローカルのディレクトリに実体化して追加していきます。
なぜ重要か
AIエージェントの長期記憶は、実用化に向けた最大の壁の一つでした。単純にコンテキストを詰め込むと費用がかさみ、一般的なベクトル検索では文脈を失った断片的な情報しか引っ張ってこれません。
今回のPerplexityのアプローチは、GitとMarkdownという使い慣れた道具立てをそのまま流用した点が極めて賢明だと考えます。記憶がテキストファイルとして可視化されているため、モデル自身がgrepなどの使い慣れたシェルコマンドで自由に探索できます。
何週間も続く調査業務やコード開発をエージェントに任せたいユーザーにとって、過去の指示や好みを自動で引き継いでくれる環境は、実用性を大きく引き上げるはずです。
懸念点を挙げるなら、バックグラウンドでWikiを編集するエージェントが誤った要約を作成した場合、そのハルシネーションが正規の記録としてWiki内に定着してしまうリスクがあることです。
それでも、ブラックボックス化しがちな記憶管理をオープンで追跡可能なファイルシステムに落とし込んだ設計は、今後のエージェント開発にとって重要な模範例になると言えます。
情報源 (1)
- perplexity.ai(新しいタブで開きます)原文perplexity.ai